会話のない読書会開催のお知らせ 3/14 山口慎太朗『デリケート』@フヅクエ初台

2024.03.02
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その本を読むためだけに用意された、贅沢で最高の読書時間——
「会話のない読書会」は、楽しみにしていたその本を、同じくその本を楽しみにしていた人たちだけが寄り集まった空間でただただ読む、という読書会です。
この読書会では、参加者同士が本について語り合ったりすることはしません。映画館で映画を観るように、おのおのの席で、黙々と、ただ読む。コーヒーやお酒や食事を楽しみながら、決められた時間のあいだ、ただただ読む。時間になったら帰る。
参加者たちは見知らぬ者同士のまま、「ここにいる全員が今、同じ本を読んでいる」という認識だけが渦を巻く。ただそれだけが、どうしてだか忘れがたい、濃厚かつグルーヴィーな体験に、なれ、という企てです。
今回はフヅクエスタッフ山口慎太朗の小説『デリケート』を読みます。
「就職活動をすぐに諦めた折原明(おりはら・あきら)は、大学を卒業して「新宿檸檬シアター」という小さな映画館で映写技師としてアルバイトを始めた。お金がないことを理由に、同じ映写技師の美工藤絵理(びくどう・えり)とワンルームでの共同生活を始める。東京・新宿のミニシアターを舞台に繰り広げられる、若者たちの青春群像小説。」というのがあらすじなんですが、かつて読んだとき、あまりに感動して、会う人会う人に喧伝していたことを覚えています。読んでいた時期の日記をいくつか。あ、僕はフヅクエの阿久津と申します。
10月21日
最近知り合った人、この人なんですけど、ツイッター面白くてと、僕はなんでも話すスズキさんだから話したのが金曜日だった、そうしたら土曜日の昨日も来られて、それはごくごく珍しいことというか記憶にない連日だった、それで昨日も帰るときに話していたら、昨日教わってツイッター、見てみたんです、そうしたら小説あって、読んだんです、それが僕はすごく好きで、朝までずっと読んじゃいましたっていう、今日はそれだけ言いたくて来た感じです、どこかの帰りというわけでもなくて、日中はジムで体を動かしていました、ジム行ってるんですか、いいですね、最近それが楽しくて、ともあれ、小説が面白かった、わあ、そうなんですね、僕はちょっとしか読んでないな、と思って、そのちょっとしかのときはずっとツイッターをさかのぼっていたときで、意識はツイッター優先だった、ツイッター掘っていきたいの、それが楽しいの、と思って、だからnoteで小説が書かれているそのリンクに行ったときもちょっと読んで、ツイッターに戻った、その小説をスズキさんは朝まで掛けて全部読んだ、とにかくよかった、そう言っていて、じゃあ僕も読んでみようかなと思って昨日、読み始めたら、これが面白い、面白いというか、すごい、これは、すごい、面白い、と、ずっと読んでいった、そうしたら一日が終わった。
すごい、すごい、と思いながら、この人に嫌われない人というか、この人に「ダサっ」と思われない人であるといいなというか、顔向けするのが恥ずかしくない人でありたいなというか、そうじゃないとな、と思った、ちょっと、怖かった。
10月22日
いくらか仕込みをして、空いている時間はずっと、昨日と同じで、日記の見直しと、それから最近知り合った人の小説を読む、を交互にしていた、交互というか、休憩している時間はずっとその小説、というようだった。全力で歌がうたわれる場面があった、そこで、泣いた。この小説は、とにかく、やさしい。人間に対してとにかくやさしい。真摯だと思う、というこういう感覚は、滝口悠生を読んでいるときに思う、ジエン社の演劇を見たときに思った、それと同じ、やさしさ、真摯さ、誠実さだった。
10月23日
最近知り合った人の小説を、noteの全32回のテキストをいったん全部エディタにコピーし、それをInDesignに流す、ということをなぜかやり始めた。やったところ、230ページほどだった。僕は何をしているんだろうか。それにしてもこの小説は、本になったりするべきものなんじゃないのか。と、僕はここ数日、思っているらしかった。
10月24日
最近知り合った人の小説がなんだかすごくよかったんですよという話や、鈴木さんの店の話、『読書の日記2』の話等々、あれこれ話し、つまり僕は話したいことがいろいろあったということだった、話して、楽しく、飲んで、いい時間だった、僕は、内沼さんと話しているのはいつも気持ちがよかった。
10月27日
ひたすら山口くんの小説の話をしていた、二人ともに興奮した口吻でしゃべった、僕はすごく興奮していた、あれは、すごい、その気持ちがすごくしゃべらせた、それで喋って、店に戻って、勝手に作った縦書きバージョンのPDFファイルを見て、また少し読んだ、スズキさんは何度か読んだらしい、どこかが本にしないだろうか、もしどこもしないなら、もしどこもしないなら。
10月29日
閉店後、山口くんに来てもらい、説明会というか、シフトの相談や、フヅクエで働く心得みたいなものを訓示を垂れるみたいなことをして、それから、心得の続きみたいなものとして、「絶対に嘘をつかないで」と言い、言い切らないうちに笑ってしまって、それはだから増村さんのセリフとして言った、あとはずっとひたすら『デリケート』の話をしていた、話しながら、自分でもよくいろいろ覚えているなと思って感心した、それだけ熱心に読んだということだったのか、それだけ勝手に刻み込まれてきたということなのか。
10月30日
『読書の日記』が手元にわずかになったので、NUMABOOKSに寄って10冊追加でいただいて、いただきながら松井さんと話した、あたらしい人決まったんですね、そうなんですよその人の小説がなんかめちゃくちゃ面白くってこれNUMABOOKSから出してくださいよ、そう言って、今、言いたくてしかたがないらしい。
10月31日
帰り際は、山口くんの小説の話をした、今日はそれを終わりまで読んだらしかった、よかったらしかった、あの場面、この場面、と話して、みんな山口くんの小説に大きく感動している。遊ちゃんが帰ったあと、僕も少しまた読み直して、いいなあ、いいなあ、と言っていた。
改めて日記を読み返すと本当に毎日のように誰かと/誰かに『デリケート』のことを話していたのが知れて笑ってしまいましたが、もうちょっと引用続けます。
1月13日
僕は山口くんの文章のだいぶファンで、そろそろ「2018年のよかった本ベスト10」みたいな記事をアップしたいな、そのためには本を考えなければな、と思うのだけどそのときに最初のほうに浮かんでくるのが彼の『デリケート』だった、いろいろな場面をいろいろなタイミングで思い出す。それは、すごいことだと俺は思うんだ。
2月20日
外で休憩しながら山口くんの日記を読むと山口慎太朗が登場してそれからタナカイズミが出てきたさらに花ちゃんも出てきて鳥肌が立ってたちまち泣きそうになっていた、そして花ちゃんがステージで、タナカイズミがライブハウスのフロアで、その横には山口慎太朗で、彼らは「デリケート」を歌っていた。ずるい、と思う間もなく涙が出た。
5月3日
穏やかでいいなと思った、穏やかなもののほうがいいなと思った、「時間の経過とともに生まれるものの中でも特に穏やかさを俺たちは愛した」みたいなことが山口くんの小説に書かれていて『デリケート』に書かれていてそれが腹にゆっくりと落ちる「そうだよね」というものをもたらした。
11月23日
寝る前、外で煙草を吸いながら「誰かの日記」を読んでいた、先日読んだところで「家建てるための脚だよこれは」というフレーズがあってそれがしびれたなと思い出して、読んでいたら「デリケート」という言葉が出てきて僕はもうデリケートという言葉を見るだけでふわわわわと全部が思い出されるようで気持ちが溢れそうになった。ちょうど山口くんからお疲れさまですの連絡が来たからそう返したら、山口くんも同じで、「僕もなんだかデリケートという言葉は簡単に使えなくなってます、不思議です」とあった。
6月30日
めちゃくちゃかっこいい。遊ちゃんがそのあと引き取って読んでいて、小説ってすごい、と言って、それから酔っ払う文章、みたいなことを言って、クラクラしていた。佐藤くんが冷蔵庫の前で踊っていた。ダミアン・ライスの「Delicate」が流れて、
「うわ」
と思った。この人たち。ここにいる人たち。ヤングフォークス。『デリケート』のあの場面を思い出した。この人たち。ここにいる人たち。ヤングフォークス。僕はこの人たちを本当に好きだ。
という、たくさんになって長くなりましたが、僕にとっては何度も何度も思い出しが発生する小説で、それは多分、すごく大切な小説、人生の何かに刻み込まれた小説ということのようです。
今回はその『デリケート』の刊行を記念してというところで、当日は山口慎太朗がせっせと働いていますので、その中で山口慎太朗の小説を読む、変な時間を体験しにきてください。全員が『デリケート』を読んでいる空間というのは、これは僕の思い入れ過多によるものかもしれないですが、でもやっぱり『デリケート』の群像劇感とも相まって、すごく感動的なものになる気がしています。
ぜひお集まりください。
なお、『デリケート』の現在の取扱店はこのページ最下部からご確認いただけます。
山口くんも書店にアタックを掛けているところですが、興味を持ってくださった書店さんは(あるいは本屋さんでなくてもなぜか「仕入れて売るぞ」と思ってくださった方は)ぜひ山口くんまでご連絡ください。 kurumakowasu@gmail.com

開催概要

日時
3月14日(木) 予約ページはこちら
19:30~22:00(19:00開場)
場所
フヅクエ初台 渋谷区初台1-38-10 二名ビル2F
読む本
山口慎太朗『デリケート』
※ 本はご用意ください
※ 予約ページでは「予約+本」のセットの販売もしていますので、よろしければ!
料金
1870円(税込み)
※ 2ドリンク付き
定員
11名
内容
「読む本」を読みます。
飲み食いしつつ、ただただ読みます。
途中で疲れたらしばらく他の本に退避したり、外出しての休憩も。
22時で終了のお知らせをしますが、あと30分は開けていますので、そのまま読書を続けていただいてもいいですし、この日は22時以降はおしゃべりとかもOKです。
という感じで、なかなか味わうことのない読書体験になるのではないかと思いますので、ぜひいらしてください〜!

『デリケート』取扱店

フヅクエ店頭(3日の4時の山口くんの出勤時間から)
フヅクエオンラインストア
BREWBOOKS(近日お取扱い開始予定)
庭文庫(近日お取扱い開始予定)
鰆舎(近日お取扱い開始予定)
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